下重彰子先生 ペットの健康コラム

下重先生のわんちゃん健康コラム

老齢犬を飼うために…

日々の予防や医療の進化によって犬たちも人間と同様に長寿命化しています。
今回は、飼い主として老齢犬を飼うための心構え、そして痴呆に関する対処法についてご紹介したいと思います。

基本的な考え方

生活のリズムを守り、できるだけ同じ人が同じようにお世話してあげましょう。

部屋のレイアウトは出来るだけ変えないようにしましょう。同じ部屋だと認識できず、混乱してしまうことがあります。
排泄場所は行きやすい場所に配置しましょう。ただし以前と場所を変えた事で粗相しやすくなったら元の場所に戻しましょう。

散歩について

「年だから、散歩が必要ない」は間違いです。

散歩の目的
1) 社会性を身につける 必要なのは仔犬の期間です
2) 運動 年齢、犬種などによって必要量は異なります
3) 気分転換 年齢、犬種を問わずどんな犬にも必要です

食事について

一般的な成犬用のフードから徐々に時間をかけて老犬用フードに切り替えましょう。

老犬のからだに必要な栄養素

歳をとってくると、運動量も減り徐々に体の機能が衰えてきます。それに従って必要なもの、不必要なものがでてきます。
老犬用フードは老犬の為に考えて作られたフードなので、こういったフードを食べている方が健康管理しやすくなります。

上手に首を曲げられない場合などもあるので、その犬が食べやすい高さに合わせて食事台を作ってあげましょう。
「のどの渇き」を感じにくくなるので、フードをぬるま湯でふやかすなどして水分を摂らせる事も必要です。

老犬の認知症について

「痴呆」とは、学習した事を忘れ、運動能力が低下し、飼い主とコミュニケーションがとれなくなり、飼育困難な状態をいいます。

健康コラム わんちゃん■原因は不明:
人間のアルツハイマーは遺伝的要因ということが判明していますが、犬の場合はまだ分かっていません。

■なりやすい犬種:
日本犬の雑種、特に柴犬が痴呆になりやすい傾向にあります。

これらの犬種がなりやすい原因の1つとして、食生活の欧米化が挙げられています。
これまで、穀物や魚主体の食生活をしていたこれらの犬種は、魚由来の不飽和脂肪酸を多く必要としていましたが、その食生活が魚主体から肉主体に変わり、不飽和脂肪酸の摂取量が減ってしまった事が引き金になっていると言われています。

痴呆発見のポイント

1) 夜中に意味なく単調な大声で鳴き出し、なかなか鳴きやまない。
2) 歩行はトボトボ歩きで、円を描くように歩く。
3) 狭い所に入りたがり、自分で後退できずに鳴く。
4) 飼い主、自分の名前、号令がわからなくなり、何事にも無反応になる。
5) よく寝て、よく食べ、下痢もしないのにやせてくる。

ひとつでも該当したら、痴呆の疑いがあります。

■“痴呆”と診断されたなら・・・
中でも頭の痛い「夜泣き」「徘徊」の改善策をご紹介!!

痴呆発見のポイント

夜鳴きについて・対策

夜鳴きについて痴呆になると生体時計が狂ってしまうので昼夜逆転の生活になる傾向があります。
また、ペットシーツが汚れたり部屋の隅で動けなくなる等ちょっとした事でよく泣きわめくようになります。

犬は高齢になると声帯が硬くなり高周波で鳴くのでよく響きます(一定の周波数)。
人間の聴覚は様々な周波数が混ざった雑音なら慣れる事ができますが、一定の周波数の音を聞かされ続けると発狂するといわれています。
飼い主さんの為にも夜泣きには早急な対策が必要です。

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夜泣きの対策:

日光浴させる1)日光浴をさせる
日光浴をさせることにより、メラトニン分泌を促し、生体時計を調節する事が可能になり昼夜逆転の生活を改善できます。

2)EPA(エイコサペンタエン酸)DHA(ドコサヘキサエン酸)を摂取
日本犬犬種の痴呆犬は、EPA・DHAが著しく減少している事が多いのでEPA・DHAを含む栄養補助食品を与えましょう。
早ければ3日で効果が現れ、1週間で夜鳴きがやむこともあります。

徘徊について・対策

痴呆になると、「後退する」という動きができなくなり、「前進する」ことしかできなくなります。
勝手に外に出てしまうと、はるか遠くまで行ってしまうこともあります。

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徘徊の対策:

1)エンドレスケージを作る
クッション性のよい風呂用マットなどを利用して、丸いサークル(エンドレスケージ)を作りましょう。
角がないのでどこまでも前進し、やがて疲れて眠りにつくでしょう。 又家のあちこちに放尿する心配がなくなります。
その時、犬の回る方向をよく観察して下さい。右回りであれば正常、左回りであれば脳腫瘍の可能性があります。

2) 室内の障害物を取り除く

3) ドアは常にきちんとしめるようにしましょう。

排泄について・対策

■トイレが近くなる― 1日2回散歩の時だけで大丈夫だった子が、家でも失禁するようになる
その原因として例えば…

  • 肝不全など多飲多尿の疾患にかかっている。
  • 関節炎など痛みのある疾患にかかっている。
  • 脊椎・後躯マヒで膀胱を縮める力が弱っている。

■寝たきりになる―自分でトイレに行けないため失禁する。

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排泄の対策:

行きやすい場所にトイレを設置しましょう。ただし、トイレを移動したことで粗相しやすくなったら、従来置いてあった場所に戻しましょう。
寝たきりの場合は、オムツをつけ、汚れたらすぐに取り替えてあげましょう。
(放置すると膀胱炎の危険性があります)